【昭和のプラモ少年制作記】『その七十八』

海が完成したので進水式を執り行います。

あとは艤装を組み立てれば終わりですがその前に…

越えねばならぬ最後のひと山。手摺りの取り付けです。

付属の飾り台ではグラグラするので、ここから先は海にセットしての作業です。

ここでは、新田丸で余った1/700用エッチングパーツを使います。

船は1/500ですが、サイズ自体はここで使っても特に違和感はありません。

ただ、新田丸ですっかり苦手意識がついてしまった難作業。

ここまで順調にきた造り込みを一気にぶち壊す不安もあり、取り掛かりには勇気が要ります。

新田丸のエッチングはなぜあんなに苦戦したのか？初めてだから当然。

そらそうなんですけど、結局は余計な所に接着剤が着いて、細かい調整がむちゃくちゃになるからですね。

瞬間接着剤は要る箇所にだけ的確に着けないと。

垂れや拡がりは厳禁です。そこで今回は瞬間接着剤をジェルタイプに替えます。

瞬間接着剤だからと慌てず焦らず、両手２本のピンセットで手摺りをつまみ、ゆっくりセットする。

神経を集中し、神経を研ぎ澄まし、神経をすり減らし…こういう作業してると、なぜか無性にチョコレートが欲しくなります。

手摺りの取り付けが済んだデッキ。接着剤のはみ出しは艶消しを噴いて隠します。

仕込み済の煙突デッキとドームレストランを慎重に乗せ、細かいパーツを装着。「さんふらわあ８」完成です。

おかげさまで「作品」と呼べる仕上がりになりました。

アリイ製「さんふらわあ５」と並べてみます。

煙突は日本高速フェリー末期の黒に朱の帯、今回は艶ありにしました。

ブルーハイウェイラインの朱一色よりも太短く見えます。

ドームの放射柄は資料によると緑でした。ブルーハイウェイライン移行後は両船とも青に変わってるようです。

個人的思い入れの強いナカムラ製モデル、じっくり時間をかけて造り込みました。

エアブラシ塗りに半ツヤを噴いた船体は、手塗りを磨いたアルゼンチン号の美肌とはまたタイプの違う美肌フェリーです。

初トライは五年生ぐらいだったか、当時は梅田阪急五階玩具売場に完成見本がありました。

大きなニチモの大和も飾っていましたね。

あんな時代から眠っていたモデルが、年月を重ね時代を越え、ついに晴れて船になりました。

しかしその時にはもう、製造元も実船も船会社も航路もすべて消滅していたのです。

あぁ中村産業そして日本高速フェリーよ、永遠なれ